Briongóid

Drama script

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囚われの糸紡ぎ

Ep.01 庵の糸紡ぎ

利用規約

登場人物:

語り手・糸紡ぎ:性別自由。養蚕が斜陽産業になってしまって以降も、孤独に蚕と暮らし続ける人。

聞き手・来訪者:性別自由。隠者生活を送る糸紡ぎを街へ連れ出そうとする人。

設定:

森の奥なのか塔なのか、人から離れて暮らす「糸紡ぎ」を街から誰かが助けに来ますが、「糸紡ぎ」が相手に放った言葉は…?

作者追記:

オシラサマというのは蚕のことです。ご存じの方も多いかと思われますが、蚕蛾の繭から糸をとってシルクを作る、ある意味職人さんのお話です。
語り口調が男性なのですが、普通糸紡ぎは女性ですね……。その辺は演者さん側でアレンジしてくださって結構です。

001

ここから私を連れだすと、そうお言いですか?
おやまあ…。

002

私は、お(しら)様に飼われている身でございます。
この鍋の中をご覧くださいまし。

003

これは今年初めてになるお白様の(まゆ)です。
お白様のお世話をし、作っていただいた繭から糸を引き出して紡ぐまでが、私の仕事でございます。

004

お白様の繭は一本の糸で出来ていますから、羽化をしてしまうと、繭が駄目になってしまって糸が取れなくなってしまう。
なので、羽化をする前に繭をとり、こうやって火にかけてほぐし、糸をいただくのです。

005

当然、お白様はこの中で死んでしまいます。

006

可哀想と思われますか?
外の世界を知らぬまま、糸を奪われるためだけに殺されるお白様を。

007

お白様は、人の手を借りずして、外の世界では生きてゆけません。
例え羽化したところで、飛ぶ力もありません。
真っ白なお身体は、敵から身を隠すことも出来ません。

008

長い間人間と共に生きていく中で、そうなってしまったのだそうです。

009

私も同じです。ここから出ても、生きてはゆけますまい。

010

けれど私はお白様をお世話することは出来ます。
その代わりに、お白様はその命を私にくださいます。

011

私は、この小さな(いおり)で、お白様とともに生き、時が来たらこの世を去る。
それで良いのです。

012

いくら貴方様が、私を囲いの中の鳥よと哀れもうと、私はそれで、十分幸せなのですよ。

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