Briongóid

Drama script

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鬼の昔語り

Ep.01 刀鍛冶の話

利用規約

登場人物:

語り手・刀鍛冶:性別自由。刀を単独で打ってるくらいなので30代以上?

聞き手・来訪者:性別自由。秘境っぽいところに一人旅するくらいの年齢(大雑把)。

設定:

ある地方の刀鍛冶が、よそから来た来訪者に語る昔話。刀鍛冶は自分のことを鬼の末裔だと言い出しますが……。
とある美術館の学芸員さんがお話してくださった仮説をお借りして脚色しました。裏付けは詳しく取っていないのでフィクションということでお願いします。

作者追記:

ベースになっているのは、桃太郎を始めとした日本各地に残る「鬼退治」の伝承です。
だいたいその伝承が残る地域というのは鉱山があるのだとか。平安時代あたりは、大陸から渡ってきた民族の他、蝦夷やアイヌ等さまざまな民族が日本にいたそうで(今も末裔はいますが)領土争いもそれなりにあったようです。その中で敗北してしまった民族の末裔が語り手となっております。

001

ここは昔、鬼の住む場所であったのをご存知ですか。
我らはその鬼の末裔にございますよ。信じる信じないは、ご自由に。

003

ここには昔から、鉱山がございました。金と銀ばかりか、良質な鉄が豊富にとれた豊かな山でした。

004

でも、その存在を知った時の朝廷が、それを欲しがった。

005

生まれ育った土地を愛する祖先たちは、ただ黙って服従するのを良しとしませんでした。武器をとって朝廷に抵抗することにしたのです。
その結果、どうなったかおわかりですか? 豊後(ぶんご)の民と同じですよ。彼らが土蜘蛛(つちぐも)と呼ばれて蔑まれたのと同じように、我らの祖先は鬼と呼ばれて、都から討伐される立場になったのです。

007

それが「鬼退治」です。

008

もちろん祖先達は懸命に戦いましたが、相手は都の軍勢だ。
彼らは大軍勢に草でも払うかのように蹴散らされ、仲間は殺されるか奴隷となり、鉱山も結局奪われてしまいました。

010

刀を作る技を持っていた男達は捕らえられ、囚人(めしうど)として都へと連れ去られたのです。

011

英雄が鬼退治をして、宝を持ち帰る。ええ、昔語りの通りです。

012

連れ去られた男たちはその後、都で必死に刀を造りました。
それは囚人である彼らにとって、唯一生き残る手段でした。そのために連れて行かれたのですから。

014

名もなき囚人となった彼らは、優れた刀を造り、そこに名を刻むことでやっと、名前のある何かに戻ることができたのです。
故郷も家族もすべて奪われた我らが、何とか後世に残すことが出来た痕跡です。

015

やがて時が経ち、あの時の朝廷もたおされて、今はもうありません。
残されたのは、ほとんど鉄をとり尽くされた鉱山と、何振りかの名刀と呼ばれる刀だけ……。

017

このすっかり(さび)れた里に、興味を持つ者ももはやおりません。

018

私は時折思うのですよ。我らは、我が一族は、本当に負けたのだろうかと。

019

……わかっていますよ、答えなどというものはないのでしょう。

020

私はひたすら、祖先に(なら)い、ここでこうして刀を作っているのです。
なまくらには名前を刻めない。名を刻むにふさわしい刀を生み出すまでね。

022

それが我ら、鬼の生きた証になるのですから。

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